真夜中に貼る湿布薬

私の元気の源

愛おしいあの子との別れについて

人間、長く生きれば生きるほど、出会いも別れも増えていく。

慣れるとはいえ、家族や、大切な友人、恋人との別れを受け入れるのは、そう簡単ではないだろう。

 

私にとっては、大好きだった、いや、今でも大好きで愛している猫との別れが、

最もつらく、胸に刺さって抜けない釘のようになっている。

「抜けない」というより、「あえて抜こうとしない」が正しいかもしれない。

 

およそ20年前、まだ小学生だった私の元に、ある日突然現れた白い子猫。

公園でカラスに襲われそうになっているところを放っておけず、妹が拾ってきたのだ。

 

まだ視力がなく、青く瞳孔が開いた瞳。

透き通るピンクの肉球におなか。

そして、真っ白な毛の合間にちょびっと生えている、平安時代の「まろ眉」のような黒い毛。

 

私たちは彼女に、「まろん」という名前を授けた。

もちろん、由来は栗ではなく、まろ眉だ。

 

親バカと言われるかもしれないけど、天使のようなまろんに、我が家はメロメロになった。

 

毎日学校から帰ると、ランドセルを投げ捨て、一目散に哺乳瓶を温める。

まだ自力で餌が食べられないまろんに授乳するためだ。

 

当時10歳くらいだった私は、彼女のお母さんになったのであった。

 

それから不思議な巡り合わせで、4匹の捨て猫がうちに連れてこられて、

その子たちの育児も始まった。

 

家族総動員で毎日ミルクを与え、瀕死の状態だった子猫たちは、みるみるまん丸になっていった。

 

最終的に2匹は素敵なご家族に里子に出し、

もう2匹はまろんの弟分と妹分として、我が家で引き取ることになった。

 

当然3匹みんな大事な私の子どもだけど、今日はまろんの話をしよう。

 

まろんは、2020年の12月18日に亡くなった。

春まで生きていれば、17歳だった。

 

猫の平均寿命は15〜16歳なので、ごくごく平均的。大往生と言えるだろう。

決して早すぎたわけではない。

ずっと腎臓の調子は良くなかったけど、辛そうだったのは最期の2週間だけ。

それに、コロナ禍でリモートワークが続いていたから、例年よりもずっと側にいられた。

 

死直前の発作から、呼吸が止まり、少しずつ冷たくなっていくところまで、看取ることもできた。

 

それでも、涙が止まらなくて、私は生まれて初めて過呼吸を起こした。

 

 

いつの間にかまろんの死から1年が経っていた。

私は転職し、忙しい毎日を過ごしながら、プライベートもなんだか落ち着かず、

少しずつ悲しみを忘れて行っている。

 

子どもの頃から16年間、ずっと片時も離れずに暮らしていたのに。

いなくても普通に暮らせるんだ、日々の生活は変わりなく回っていくんだ、

ということを実感する度に、涙が溢れてくる。

 

正直私は、まろたんがいなくなったら生きていけない廃人になりたかった。

それほどまろたんの存在は私にとって大きく、大好きな娘であり、お姉ちゃんであり、妹であり、恋人であり、お母さんであった。

 

友達にいじめられた日も、舞台の稽古で死にそうになっている日も、仕事が嫌で泣いた日も、いつもまろたんは私に寄り添ってくれた。

 

ただそこにいるだけで暖かくて癒された。

私たちは毎晩ぴったりとくっついて、お互いにお互いを必要としながら眠りについた。

 

まろんは亡くなる数日前から満足に動くことができなくなったけど、

わずかに残る力で、フラフラしながら、私の布団の中に入って丸くなり、

子猫の頃から変わらないキラッキラの目で、にっこりと私の目を見た。

 

あの目が今でも忘れられない。

 

こんなに必要としているのに、こんなに会いたいのに、

毎日変わらず、こんな風に思っていることも誰からも知られずに生きている私が許せない。

ごめんね、まろたん。

 

それでも、まろんが沢山愛してくれた私だから、

少しずつ許せるようになりたいと思っている。

 

こうして文章を綴るのも、何か区切りをつけるような気がして、今まで避けてきたのだが、

どれだけまろたんが好きか、誰かに知って欲しくて、こうしてネットに記しておくことにしました。

 

思い出を一つずつ書き出したらキリがないので、今日はこの辺にしておくよ。

胸に刺さって抜けない釘はそのままにして、丸ごと体全部で飲み込んでしまおう。

 

まろん、永遠に大好き。天国で、ちゃとらん、とろ助と仲良くしてね。

そのうち会いに行くから、待っててね。

 

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足、臭くてごめんね